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俺色どん兵衛 ~怪物お揚げ編~

今回のゲストレポーター:サカイエヒタ
今回のゲストレポーター:サカイエヒタサカイエヒタ(twitter @ehita_sakai)
ライター、エディター、構成作家。
モノヅクリユニット「mochrom(http://mochrom.jp/)」 のメンバーとしても活動中。

僕はどん兵衛が好きだ。
何が好きかって、あの甘くジューシーなお揚げが好きなのだ。

理不尽な東京に一筋の希望を感じさせるどん兵衛の御姿
理不尽な東京に一筋の希望を感じさせるどん兵衛の御姿

どん兵衛を食べる度、お揚げと麺の比率に悩む。
お揚げばかりを食べれば、後半のどん兵衛はその輝きを失い、それはもはやどん兵衛ではなくなる。
どん兵衛はお揚げがあってはじめてどん兵衛であり、お揚げのないどん兵衛なんて、魔法の解けた朝7時の六本木を歩く女性のようなものだ。

「私、こういうものです」
「私、こういうものです」

しかしながらこのお揚げ、なんとも小さいのだ。それは僕のお揚げリビドーを満たすには何枚あっても足りない。ぺらぺらなお揚げは毎度私をあざ笑い、決して満足させるでもなく西日と共に消えてゆくのだ。

いつだって君は僕を満たしてはくれない。
いつだって君は僕を満たしてはくれない。
そう、あの五反田の夜もそうだ…。
そう、あの五反田の夜もそうだ…。
どん兵衛っ!君はなんて罪な奴なんだ!いつだってそうだ!!
どん兵衛っ!君はなんて罪な奴なんだ!いつだってそうだ!!
田舎帰るか…
田舎帰るか…

そんな嘆きのどん兵衛ライフを送る僕に、新潟の友人から素晴らしいアイテムが届いたのだった。
寝起きの僕は、宅配してくれたお兄さんからその荷物を受け取ると、そのあまりの重さに目が覚めた。

栃尾の…油揚げ…?
栃尾の…油揚げ…?
なにこの立派なの…
なにこの立派なの…
なにこの分厚いの!?分厚っ!!少年ジャンプ!?
なにこの分厚いの!?分厚っ!!少年ジャンプ!?

興奮した僕は急いで鍋にお出汁を作り、その分厚い栃尾の油揚げをことことと煮始めた。僕のお揚げリビドーは頂点に達し、お揚げが色づくまで部屋をぐるぐると歩き回った。
小さなお揚げしか出会って来なかった僕に、遠い新潟からやってきた彼は、山で遭難中に出会ったCWニコル並に嬉しい存在だ。これで助かる…助かるんだ!!!!

そして出来上がった「どん兵衛feat.栃尾の油揚げ」
そして出来上がった「どん兵衛feat.栃尾の油揚げ」
嘘でしょっ!?誰だお前…!?
嘘でしょっ!?誰だお前…!?
きやあああああああああああっ♥
きやあああああああああああっ♥

とにかくそれは今までのお揚げとは格が違う。分厚い。分厚く、そして重い。箸を持つ手が思わずぷるぷると震えてしまう。お出汁を十二分に吸ったたっぷたぷのお揚げは、お出汁だけではなく、僕のなけなしのプライドさえも吸い取ってしまう。感服だ。もうこいつの前ではかっこつけることすら出来ない。

はむっ
はむっ
うっ
うっ
うまああああああああああああああああい!!!!!
うまああああああああああああああああい!!!!!
お母さあああああああああああああああああん!!!!
お母さあああああああああああああああああん!!!!

どっしりとしたその力強いお揚げは、僕の知っているお揚げではなかった。
ヤムチャとベジータくらい違う。

僕のどん兵衛ライフは輝きを増し、それは同時に、この理不尽な街TOKYOで生きる僕に活力を与えてくれた。すべての命に感謝し、僕はまた明日から胸を張って生きていく。このお揚げのように分厚く大きな男になるために。ありがとう、栃尾の油揚げ。

サカイエヒタ