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昔ながらの手作り製法を守り続ける、上越市のアイス店。看板商品アイスキャンディーは素朴な味わいで、親から子、子から孫へと何世代にもわたって地元民に愛されている。

井上冷菓 開店前から客が並ぶ人気店

「昔懐かしい味」が人気のアイス店

上越市の井上冷菓は、アイスキャンディーを看板商品に掲げるアイス店。創業は戦前の1938年で、ちょうど日本中でアイスキャンディー店が誕生し始めた頃である。高田だけでも20軒以上はあったそうだが、現在は同店1軒だけ。当時から変わらない手作りで手掛けるアイスキャンディーは、ミルク・あずき・チョコの3種類。かわいいサイズ感と低価格が魅力で、多い時には午前中だけで2500本も売れることがあるそうだ。そして寒い冬の名物は、ホカホカのたい焼き。「皮が厚めで、中はふわふわ」と好評を得ている。前身は「かぼちゃや」という屋号で乾物屋を営んでいたことから、今でも「かぼちゃや」と呼ぶ年配客がいるという。3代目の橋本さんは、「長きにわたって足を運んでくれるファンがいるのは嬉しいです。アイスもたい焼きも、みんな童心に返ったように笑顔で食べてくれます」と語っている。取材中も「アイスのミルクを20本、あずきを10本ください」と買いに来る高齢客がいた。そんなまとめ買いをする大人から小銭を握りしめた子供まで、幅広い世代に愛されている。

「かまど炊き」にこだわったアイスキャンディー

井上冷菓のアイスキャンディーは、すべて手作り。まずは「原液の素を作る」工程から始まる。原料はいたってシンプルだ。たとえば「あずき」の場合は、小豆・砂糖・水飴・でんぷん・ブドウ糖のみ。合成着色料や保存料、人工甘味料は一切使っていない。次に「煮詰める」工程。創業から80年以上「かまど炊き」を貫いている。かまどに薪をくべ、じっくり30〜40分かけて煮立たせていく。その製法は、3代目の橋本さんが受け継いでいる。「かまど炊きはとても大変です。特に火加減。吹きこぼれないように、常に薪の量を微調整しなければいけません」と橋本さん。では、なぜ「かまど炊き」にこだわるのだろうか。伺うと、「遠赤外線効果で旨味が引き立ち、ムラのない味に仕上がるからです」と語る。一本一本同じ味にするためのこだわりだ。「かまど炊き」したシンプルな原液を冷やし固めると、色も味も雑味のない素朴なアイスキャンディーに仕上がる。食べた後も口の中がさっぱりして、べとつかない。橋本さんは、「時代の流れに合わせて、価格や種類など変わってしまうものもありますが、道具や伝統製法はなるべく残していきたい」と語った。

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生産者紹介

3代目:橋本佳奈
3代目橋本佳奈

上越市出身。地元の高校を卒業後、上京して印刷会社に就職する。結婚して退職した後、地元にUターン。しばらく子育てをしながら会社勤めをしていた。2021年、父親の突然の生死に関わる入院がきっかけで、3代目の継承を決意。「両親の姿を見て自営業の大変さを知っていたため迷いました。でもお店の存続を願う地元民の声を受けて継ぐことを決意したんです」と語った。受け継ぐとともにお店の外観をリニューアル。多くの常連客から「継いでくれてありがとう、応援しています」と声をかけられるそうで、「それが商いの励みです」と笑顔を見せた。

店舗詳細

店舗名称 井上冷菓
住所 新潟県上越市稲田2-3-1